女性が強く生きることには大変な困難があった封建的な時代に、ヒロインは境遇にめげずに生きていた。
プレイボーイが改心する話は定番だが、このストーリーは、ヒロインが、その彼の行状に対して怒る、という、私が小気味いいと思うことをやってくれた。該
当箇所はごく一部のことなのであるが結構いいところで効いた。すこしは、こういうことがあって然るべきとの思いもあっただけに、なんだかこれだけで高い評価にしたくなる。
よく、怒りや憎しみの矛先を、女性は男性に浮気されたとき男性ではなくてその相手の女性に、男性は女性に浮気されたとき裏切った女性に、(つまりは)いずれの場合も女性に、向かう、と言われる。
男女のことは片一方だけに責任あるのではないのに、なぜか、女性の側に非難が集中するという。これも、ひとつの、封建的な考え方だと、私は常々疑問に思っていた。古い時代の、女性だけに不貞罪を作っていた性差別の概念と同根と感じていた。
実際、女性は女性を敵視しやすい傾向にあり、この、男女関係のいびつな見方は、男性には、プレイボーイを英雄視する、一方女性にはふしだらとみる、そんな不公平を助長している。
このストーリーも、ヒロインの母へ、そして、その娘であるヒロインへ、世間の目は、同性が容赦ない。
そこへ、伯爵の嫁になれなかった女性からのヒロインへのサポートは、気持ち良かった。女性の嫉妬が女性に向かわなかった、ヒロインもその女性も、というところに、このストーリーの良さを感じた。
悪人の登場で気の休まらないストーリー展開がまた、ありがちな偽装結婚、でも実はお互い好き、という、HQ的なマンネリズムをうまく逸らしてくれているのも、丁度引き締まりが設けられていたと思う。
絵が可愛らしく、カラー頁は綺麗。配色に上品さを感じた。
伯爵の愛すべきお姉様が、複数の子持ち設定では仕方ないことではあるし、キャラからみても想定可能ではあるが、かなりオバサンなのが、少し驚きだった。
私的にはこれほどの悪人たちは懲らしめて欲しかったが、これはこれで成敗が趣旨の話でないので、諦めるしかない。
でも、牢に繋がれるくらいのレベルなのに、と、無念だ。
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