旧制一高の受験に失敗した芦川進は日記をつけながら今後の進路をよく考えた上、以前からあこがれていた俳優の道を目指そうと決意します。夢見がちだった少年がリアリストへと成長してゆく過程を描いた本作は、1942年に書き下ろされました。太宰治の弟子の一人、堤重久の弟で俳優の堤康久がつけていた日記を材料にしていますが、元の日記にあった「マルクス」はすべて「キリスト」に書き換えられています。本書は『正義と微笑』(錦城出版社、1942年6月10日発行)を底本に、巻頭に「ミニ解説」を付けています。2010年の常用漢字改定に照らし合わせ現代仮名遣いへ改めるとともに、常用外漢字にはルビを振り、読みやすくするなど、独自の校訂を行った縦書版電子書籍です。
目次:
正義と微笑
あとがき
著者・解説者紹介
著者について:
1909年6月、青森県北津軽郡金木村(現五所川原市)生まれ。本名、津島修治。東京帝国大学仏文科中退。1935年「逆行」が第一回芥川賞候補になる。1936年第一創作集『晩年』刊行。以後、「女生徒」「斜陽」「人間失格」等著作多数。1948年6月没。