レトロ感漂う大正から昭和へかけての背景に、能楽師の美しい父と息子の禁忌の恋。。。まぁ何てお耽美な
と思いきや、13巻からどんでん返し的な展開で、1気に読み切りました
能楽で言えば序の段、冒頭は、主人公の美少年
麗司が痛々しいほど
実の父親に恋焦がれ(なんと)結ばれちゃうまで
そりゃ、思春期に多少バカでも、清く正しく真っ当に生きるのが良いに決まってます
しかし、love is blind 恋は盲目
禁忌ゆえに惹かれあい、求めあう恋は夢のように、お伽噺のように、はかなく脆く、危うい美しさで、幸福に満ちて、密かに輝く星のよう(はぁ〜 久々、耽美って素晴らしい)
ジェンダーに問題アリアリな麗司の心理は、恋を思い詰める少女のようで、息子に対し揺れる父親の心情を謡曲『政経』より『〜身は悪人』と描くあたり、ありがちな耽美に落とさない作者様の演出が光ります
そして破の段、中盤では麗司の環境が激変
夢から覚めたように、何もかも破れ崩れ去り、サロメもブッ飛ぶ狂気の展開
凄絶です
終盤の急の段、成長した麗司は、もはや少年期の弱々しく純粋な存在ではなく、したたかに強く生きる獣のような『人間』へと変貌し、大人となります
能楽の段取り『序破急』のごとく描かれた1人の男性の生き様を読み終えたとき、何かワケの解らない感情が胸に迫り、ドッと涙があふれました
痛いくらい純粋で切ない子供の恋が、人生を貫く呪縛となり、その愛しく苦しい恋からの解脱が、現実を生きる大人への道だったワケですが。。。とにかくセツナイ
夢のように美しく至上の恋だったからこそ、失われた時間を狂おしいほど求め、二度とは取り戻せない血を吐くような苦悩に縛られ、生死をかけて足掻き、諦めた果てに、ようやく本当の人生が始まる
切ないです
導入部では麗司の美少女すぎる絵ヅラに引きかけましたが、コレ、ただのお耽美BLじゃございませんね
1人の男性の成長と半生を地獄巡りの如く描ききった、名作ドラマです
号泣しちゃった以上、☆×5ですねッッ
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