大人だけど恋愛巧者ではなく、こじらせた関係や古傷の苦しみ、何を信じたらいいのか、そんなところを経て、互いにその相手に代わる者は今誰一人としていないという事を遠回りに気づく。
藍先生の黒色の使い方が好きで、綺麗さに唸ってしまう。コマの切
り取り方も、台詞の切り取り方も、話の進行に提供される断片の切り取り方も、センスがいいなと感じる。
ペンに荒っぽさがあるので人物が急いで描かれたように度々感じた。もっと艶っぽい魅力を出せたのではないかという気がしてならない。
先生の画力を他作品に見つけていると思っている私には、このセットの三作いずれも、製作に時間をかけた感じが欲しかった。
「実らぬ初恋」ー HQの得意分野だがイントロから惹き付けてくる。彼が中東装束が似合うのがおまけのように良かった。伯爵令嬢のTVでのコメントとリアクションは意表を突いた締め括りで、このくだりがこの作品の最後の調味料として、かなり仕上げを左右した。ヒロイン友人もささやかに狂言回しとなってくれたし、お陰で余計にヒロインが素直に伝えに行く場面に好感が持てた。
「復讐は愛ゆえに」ー 自分はお金持ちだから、仕事も男性も選択の基準にお金は入っていない、とのヒロインの台詞に拍手。ヒロインの傷ついた心を再び彼に向かわせる過程はしっかり描かれてる。復讐とは壊れた心、愛の回復は壊れた太陽神ヘリオスの像の修復になぞらえている。
一旦破局して復活するストーリーは多いが、彼の行動にこうも紙幅を費しているものは私は初めて。
あと、女優がヒロインのHQ、誰と付き合おうが、私生活を大事にするのが、西洋のエンタメ界なんだなと感心する。お話ではあっても、そこはきっとカルチャーなのかなと。
「再会はスキャンダラス」ー ヒロインの、彼のことを高校時代からずっと好きだという気持ちが余りにもタップリ描写されて、つれない彼の態度や、少しでも気を引こうとするヒロインの積極性が、私の応援気分を盛り上げた。
この作品はHQあるあるの、こどもが気に入ってくれた点も大きいが、パパとの結婚が決まったときの一言が話の一貫性に繋がって、一味加わった。また、良き父親であるとが、私のツボだった。
ヒロインは15年前から彼に恋をして、子持ちとの状況は後から発生しているわけで、それでいながらの良き父描写は私の心を掴んだ。特にアビーの結果を受けた彼の、子の立場を踏まえた発言に感動！
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