余りにも哀しく辛い経験をした人の、深い闇を瞳の奥に見つけたヒロインジェイド。その忘れられない人は凄腕のガン捌きの浪人ネバダだった。
ヒロインの少女時代は相当特殊だが、この相手となる男性の人生は、凄絶で過酷で、そしていばらしか生えていな
い。HQでここまで重く暗く厳しく、生半可な波乱でない強烈な逆風にほぼ常に翻弄されてきた半生を、初めて目にした想い。
よくぞ今まで生きてきましたね、というか。
そして、それは人災に端を発していた。冤罪、誤解に基づく、ある意味リンチと、その後日談である。その、最初のきっかけを作ってしまった冤罪という大きな間違いをしでかし、根も葉もない根拠に基づく犯罪への憎しみを方向違いにぶつけたコミュニティの反省が形にならないと、彼は救われなかったのだ、という長い苦しみのトンネル物語と言えるかもしれない。無実であったかもと思わずに、群衆心理で祭りのように煽り立て、被害者がそこにいるのに犯人扱いして、その家族を地獄に落とした過去を、このストーリーは向き合わせる。
恐らく、古今東西無数にあったろうこの様な着せられた濡れ衣を、無念を晴らすチャンスを与えられず人々によって不幸にさせられた者達を、このストーリーが、少しでも話のなかで埋め合わせさせるかのよう。
そんな怒涛に巻かれて傷だらけで生きている中で、その彼はジェイドと会っている。
ジェイドもまたその心引かれる出会いを忘れたことはなかった。
このシリーズは犯罪者は凶悪で、銃火器使用も日常の中の一光景として入り込み、荒くれ男の暴れぶりに一切の甘さがない。それが、今に至る米国の自分の身は自分で守る考えに通ずるものを感じ、日本人読者としては、複雑な気持ち。
女が生きていくには、術も選択肢もなかった時代、ジェイドの父親は一代で牧場を大牧場に育て上げ、商売でも全米各地を回ることで、財と女を築き、金と愛をばら蒔くようにして、ある日殺されて亡くなった。
ネバダも犯罪と無縁ではなかったけれど、染めさせたのは究極誰だったのか、そこには真実がどう扱われたか、彼の行き着いた境地を思うと、ロマンスよりも切ないのはこっちである。
ヒロインも自分のやろうとしていることを立ち止まって考えることがあって良かった。
シリーズで、ずっとタイプだった牧師様、震えるほど衝撃でした。
甘い顔立ちが気に入っていたのに。
込められた物が深かった。
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