絵柄が安定していて、どの作品も登場するキャラは宮園ワールドの住人だ。そこ、似てると思わせるのか、同じとの批評を受けていたが、世に出す作品が同じ傾向を持つ作家はかなりいるから、私の場合、気にしない。毎回作品毎に新境地開拓するエネルギッシュな作
家魂がより素晴らしいはずなのも認めるが、これが、4作品すべてが近いテイストでグラデーションが付いただけでも、一冊として纏まりがあって、居心地の良さを醸し出す。
表題作:上司と部下。互いに会社では見せない顔を、とあるハプニングで、ある意味、深く知り合ってしまう。そのドキドキ感が良かった。
僕らが恋した楽園:三角関係。いい時代を共有した関係でもあり、遂に分解するしかなくなる局面を迎え、全員が幸せということはあり得ないのが過酷な三角関係というものを、漫画らしい甘がけ加工で採り上げる。誰かを選ぶことは、別の誰かを選ばないということ。究極で逃れられない決着を迎える。主人公の気づきが、当人の苦しさを段々伝え、緊張感が最高潮の時、ストーリーに引き締まりが加わってくる。
Again-恋時計が動くとき:宮園先生は、既に付き合っている二人の間の空気感を描くのが、いい感じに、仕上がる。まったり感、というか、自分の心が動かされる人との独特な距離感を、思わせ振りなやり取りで、二人の親密さを出すのが大変お上手。眺めていると、目が吸い込まれる。
素肌の温度:こういうシチュエーション、漫画はお得意だから、一体何作読んだか判らない。こうした子猫拾いに似た趣向で、信頼関係を一から構築なんてことがなくて、不思議な一足飛び、直感的にただの弾みで決めたみたいな知り合い方で、 日を追って相手が大切になっていくのが、どこかかっこよさを感じる男女のあり方に思う。彼が「寒い、エアコン」というシーンで、象徴的に温もりを求めているところ以降が、予定通りの展開でも、滑稽な位私の心臓はキュンが走っていた。
宮園男子最高な一冊。
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