マラッカ?ホイアン?シンガポール?灯篭流し場面はタイのをモデルにしたというが、舞台は東洋人と西洋人が行き交う、架空の南の国のとある貿易港設定。どこでもないけれどまるでそんな東南アジアのうちの何処かみたいな異国情緒たっぷりで、その猥雑さ、流れ
者や荒稼ぎの野心家などが跋扈する不穏さが、ストーリーをサスペンスの緊張で締めてくる。
主人公アゼリアのさっぱりとしたキャラ、気負いなく持って生まれた正義感、自然にふるまうも勇ましい行動力。最後まで丁寧な絵で描かれており、眺め倒してしまいそう。
冒険もピンチも潜り抜けてめくるめくときを燈港( トウラン)ですごしたアゼリアの短い滞在記。
燈港に着いた当初から何かと関わり合うカイとのこと。
そのカイを成り行きでとにかく信頼するしか始まらない状況から、アゼリアは段々信頼を育んでいく。2人は西洋人。際どいトラブルの中で東洋人達と出会う。
どれも見知らぬ遠い異国である、アジアの土地で、連れてきたメイド以外は頼るべき人を失ったアゼリアが、1カ月未満位の短期滞在者としては異例の燈港上級者になっていく。
エキゾチックな文化の交差点たる燈港という特別な環境で、これまで窮屈を強いられた人生の、ほんの小さな息抜きを期待するだけだったような束の間のバカンス。でもそのとき立て続けに起こったスリリングな日々。都戸先生の手ですこしやさしく南国の風が薫るゆとりと、東南アジア特有の熱気を感じることが出来る。東西文化の交わりの中の、港町特有の空気も。
雑誌連載時ごく一部読んだことがあった。シーモア島でお尋ねしたら、絶賛の言葉が返ってきて、安心してやって来た。読んでよかった。閉塞的な暮らしから解放された主人公の気分を追体験した。
4.5のつもり。
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