時代色をこうもしっかりと出せる橋本先生だから描けた作品ではないかと思う。一般の人々の服装、貴族の服装とその暮らしぶり、戦士の男性の出で立ち、肉体の逞しさなど思わず唸った。それらを描けるということが素晴らしい。この最初の一歩が、ハードル高いか
ら、漫画家としてプロの方々であっても、この話を担当しますと言える人はそうそう多くないことと思う。さすが、としか言いようがない。
西ゴート族の侵入は、歴史を習ったとき視点がローマ人サイドからだったため、このストーリーの成り立ちそのものも物凄く新鮮だった。
好戦的な気性の人(リーダー)も世に居るが、勢力拡張、覇権のみにて軍靴轟かすのでなく、純粋に、食べられるところを求めてこれまで居た土地に見切りを付けて移動を始める民が居た。それが、このストーリーのベースとなっている。流浪の民は数世紀にも渡り、各所で弾き出され続けていることもあれば、現代に於いても世界の何ヵ所でも新規発生している今日的課題でもある。夢を求めて安住の地を探すウルフリック達の情のあつさが、仲良し民族を見せつけて、無事落ち着く先を見つけることを祈る気持ちにさせられて読んだ。
社会の外敵侵入、さすらいの侵入者と入り込まれた側と。
メイン二人の恋愛成就も、 歴史の中でこそ成り立ち、また、その波に揉まれながら二人の気持ちは乗り越えて行くといった、異民族同士の大きな広い愛。それも、熱い愛情。
終わりがフニャフニャな印象。まとまるのはいいが、見せ方の雑さ、プロセス抜きなのは頁数の制約か。
奴隷制度って日本には馴染みがないため。洋画やお話だけで知っており、すごく情け容赦なく、非人道的で残酷な面しか知らなかったから、この視点も意外と言えば意外。かつての敵も取り立てて駒となり、武勲によっては味方のカウントとする面が日本にあるので、少し日本的敵味方観を見た思いだ。
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