醜いと思っているヒロインと、一族の黒い染みと思っているキアラン。彼女の誘拐を請け負ったキアランが、彼女は時をみて一族の宝を取り戻す(拐われたときは別の用事でちょっと外出のところだったが)つもりであるとの事情を知り協力、という筋立て。大地の元
素の力を使うヒロイン一族の、世間で言うところの「魔法」を目の当たりにしながら、キアランは彼ら一族のの不思議な世界に迎え入れられる。
私はこういう話が大好きで、牧先生が事も無げに、漫画を魔法の様に駆使して描いてくださったものだから、少しもあり得ないなどと醒めた気にならずに楽しむことが出来た。166頁のキアランの両目だけは左右に統一感無しだが(223頁も、多少変)。
世界中から爪はじきにされてもあなたと一緒にいたい、と思う程の相手に出会え、HQだからハピエンで、いいなぁと思う。そこまでの人に巡り会えなかった私は、こういうところで心を飛ばさせてもらう。
承認を欲していたキアランが、グレニスに認められ夢に見たことがないほど幸福だったと言う。親きょうだいが働きかけても伝わらなかったものが、ヒロインの言葉で彼は承認欲求を漸く満たすのだ。
ヒロインの兄ダマーンとキアランは似た理由で愛している相手と結婚は無理と思っているが、キアランは流石一族の長となる資質が認められるだけに、騎士としてダマーンより女性に対しては高潔だったわけだ。強盗など、かなりな重罪に思えるが、「放蕩」の表現で片付けて、お話の世界は悪党が愛すべき悪党で扱われることがよくある。
表現力の高い先生だから、時代性も妖術も、綺麗に絵にしてくれて良かった。HQコミックを担当される先生方の厳選は十二分にお願いしたい。
それにしても1440年に銀行?私がかつて調査を担当した世界最古をうたっていた銀行(英国ではなくて伊国。)は、今確認に調べ直しても1472年創業とある。翻訳、ただの両替商なのでは?
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