このレビューはネタバレを含みます▼
順風満帆な人生を送っていた久我達彦は、友人に金を持ち逃げされてから転落の一途を辿り、45歳にして何もかも失います。独りぼっちの久我は雨の中で死を考えた時、はるか昔、高校時代のキラキラした初恋を思い出します。後にも先にも好きになったただ一人の男性•半田充を探すべく、久我は友人の探偵事務所に向かうのでした。教えられた場所を訪ねて行くと、そこは田舎町のストリップ小屋でした。かつての美少年の面影を残す充はそこで雇われ支配人をしており、久我はけんもほろろに追い返されるのですが、ダンサーの1人から充が高校の頃の初恋を大切に話していると聞き、そのままストリップ小屋で働くことを決めるのでした。主役の2人はそれぞれの人生に疲れた一見ぱっとしないおじさまなのですが、30年前の初恋のときめきと痛みを共有しており、読んでいるうちにDK時代の姿が自然にオーバーラップしてきます。その自然さとストーリーの力強さとが物語に奥行きを与えています。大切にしてきた初恋をもう一度やりなおすことを決めた二人をきっぷの良い踊り子さん達が見守ります。借金のカタをつける為に一旦帰京する久我と充のその後は『例えば雪が溶け合うように』へと続きます。