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一ノ瀬ゆま

一本の映画を見終わった時のような充足感

ネタバレ
2025年8月15日
このレビューはネタバレを含みます▼ 一ノ瀬先生の作品を拝読するのは初めてなのですが、他の作品も読みたくなるほどストーリー展開やキャラクターの掘り下げ方に心打たれました。お話の構成力やコマ割りのスキルが凄まじい。読者に続きを読ませる力のある作品です。作品としての完成度が高く、お値段以上の満足感。
上中下と読み進め、宥と勁が幸せになって良かったの一言に尽きます。ハッピーエンド最高です。不穏な展開には胃を痛めながら読み進めていました。アングラな世界を描かれるのがお上手です。人の闇やトラウマ、苦しみや怒りなど、紙面からひしひしと伝わってきて、こちらも身を固くしながら読んでいました。勁が血まみれで宥の前に現れたとき、一瞬大輪の薔薇の花束を抱えてるように見えたという演出が素晴らしい。本当に素晴らしかった。そのシーンが美しくて泣いてしまいました。命が消えかかりそうな勁は儚くて見ていて不安になるのに、あの場所に直立して宥に会うという確固たる意思が奮い立っている、勁の凄まじい強さも感じられる。それを見た宥の涙が綺麗で、苦しい。勁を助けて、お願いします、と乞うシーン。本当に愛を感じました。
印象的なのは、勁の精神世界の描写です。二つの人格(感情と理性?という言い方が正しいのかは置いておいて)が言葉を交わして分析しているのが面白かったです。あれが勁の世界であり、今まで勁自身を守ってくれていたものなんだろうなと思います。そんな大切な勁の中に宥が入り込んだのか、迎え入れられたのか、そこは解釈に委ねられますが、とにかく本当の意味で頸に受け入れられたのだなと理解できるシーンは最高でした。
そして何より、勁が照れたり赤面したりボクシングに自発的な興味を持ったり良い顔で笑ったり、普通の感情を取り戻しつつあるところが本当に感動しました…だいすきです…良かったね……本当に良かった……
一ノ瀬先生、素晴らしい作品をありがとうございました。
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