ぼくのブルーキャット
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ぼくのブルーキャット

井波エン

青猫達の戯れ合いと成長を見せてもらった感

ネタバレ
2025年10月26日
このレビューはネタバレを含みます▼ ブルーキャットという言葉に教科書にあった萩原朔太郎の詩を思い出しました。だからだと思いますが夜空、月、電線の背景や、コンサート会場から2人車で都会から静かな海辺までのドライブからは、言葉に出来なかった2人の想いや楽しかった頃を大事に想う、それぞれの哀愁の様なものを感じてジーンとしました。そして夜の砂浜での2人の会話に、ブロマンス的な関係の卒業を感じて青春だなと。色んな青春があると思いますが、個人的にはリア充的な青春よりも、真綿の様な苦しみに満ちている毎日…だと美しいなと思うんですが、当真とすずの3年間がそうで、突然で。そこからどう大人になってしまうのか。その描かれ方がピアノの演奏と重なってとても美しかったです。
また作者の描く背景はそれもキャラクターのひとつの様で。真っ暗な中の細かいカケ編みや明るさをトーンで少し暗くする描写に、深い悲しみや感傷的な空気を感じて懐かしく、良いなと思いました。

当真が当時すずのアルバムを聴いていたのは、憧れというのもあったと思いますが、すずを通して夢みたものがあったんだろうなと。逆にすずは当真が初めてできた友で、彼の家で過ごす時間は特別だったのかなと。なので親友をいつ性的に意識したんだろ?と。あの事件からかな?と思いました。すずが同性の性的対象になり得るのだと当真は知って、すずはその対象になってしまった自分は当真から全身で守って貰えると知ってしまったからかな?などと思い。流した血からは2人の原罪を生み出した様なで…好き勝手に読んでますが良いなと。作者が記したピアノ曲からは、言葉ない2人の気持ちを感じて良かったです(ショパン雨だれとバルトークの未完の曲)それぞれ流しながら楽しみました。だからかコンクールのすずには感動で、袖にはやっぱり当真がいて、新しい2人の姿はこれなんだなと。

第五楽章の前に作者のあとがきがあり、次のページに「未成年への性的な加害を示唆する表現〜」の注意書きがありました。電子なのでもしかしたら地域差など、表示の違いがあるのかもしれませんが、その様な表示を作中で見たのは初めてだったので驚きました。言葉が難しいですが、まるで表現に於いて小さくなっていくお菓子を見た様な。日頃読んでるBL作品や作者の気持ちを(事件がないと物語が成り立たないのになと…)想いました。読了して作者の前作を読むとまた違って良かったです。
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