このレビューはネタバレを含みます▼
読んでいて久しぶりに泣きました。二つの時間軸のお話が入っていて、前半は現在。後半は中学のころ。両方とも、主人公ゆきとの失恋がでてきます。思春期の話ではセクシャリティを自覚することになった初恋の話。現在のほうでは、少し前に恋人と辛い別れをしたばかりで、日常の足元が崩れるように喪失の悲しみが襲ってくる。なんとか立て直すのに、匂いに敏感なゆきとは元彼の置いていった服の匂いを嗅いで凌いでいる。そんな危なっかしい日々が続いていたところへ職場に新しく入った年下の同僚、悠臣(はるおみ)との出逢いがゆきとに変化をもたらすことになる。その彼はとてもいい匂いで…というお話。私がこの作品でとてもいいなと思ったのは、感情の描写のリアリティです。ゆきとは家族にも友人にも同僚にも仕事にも恵まれています。しかし、好きな人が、自分のことをただ1人の愛する相手として選ばない(失恋)というそのことが、彼を毎日がうつろになるほどの辛さへ落とし入れる。話が進むなか、悠臣の匂いと存在に受け止められて、ゆきとが急に泣き出すシーンが印象的です。失恋というものは、ほかの人間関係ではあまりないような深い喪失感をもたらすのだなということをありありと伝えるすばらしい描写でした。続きを読めるときが今からとても楽しみです。