ハッピーエンドを約束します【単行本版(電子限定描き下ろし付)】
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ハッピーエンドを約束します【単行本版(電子限定描き下ろし付)】

波真田かもめ

作者買いです

ネタバレ
2025年12月22日
このレビューはネタバレを含みます▼ 高校時代の部活の先輩に崇拝の域で恋している執着攻めが、何を考えているのか分かりそうで分からない。ひたすら純粋なだけなのかと思えば、執着具合がヤバめの域だったり、盲目的になっていそうで、実は冷静に状況は把握していて、受けの欠点も認識できているという。
一方受けの下野は、椿に本心を隠しながらの会話ではあるものの、行動原理は単純で分かりやすい。クズっぷりが清々しい程で、良いところを探してもなかなか見つけられず苦労しました。中途半端な自尊心が災いして自滅するタイプの人。人からどう見られるかを人一倍気にするくせに、気にしてないふりする。上手く行かなければ不貞腐れ、その自尊心さえも簡単に放棄してしまえる安い男。漫画の世界で言えば、主人公に絡んでくるモブみたいなキャラ。

でも、この下野の自尊心が中途半端であればこそ、この2人は約束通りハッピーエンドを迎えられたのかもしれない。自尊心が高すぎれば椿を受け入れることはできなかっただろうし、低すぎればヒモから抜け出せず共倒れもありうる。
あと、下野が椿に絆された理由の中には、良心の呵責というのも入っていたのではと思います。下野の中に申し訳程度に残っていたが良心が発動してくれたおかげで、我に返って椿への気持ちに気付けたんじゃないかな。

高校時代から下野に憧れ続けている椿ですが、下野本人がその憧れを打ち砕くような、人として蔑まれても文句は言えない言動を繰り返すのに、頑として幻滅しない。とても興味深い椿のセリフがあって、「環境によって性格が変わるのは当たり前」「あなたが下野健太郎である限り、俺はあなたが好きです」この言葉、何気に深いなと思いました。性格を自分だと思って生きている人は多いと思うのですが、椿にとってはそうではなくて、環境によって使い分けるツールに過ぎないということですよね。椿は下野に幻想を抱いているわけではなくて、ずっと下野の本質を見ていたってことなのかな。表面ばかり気にする下野とは正反対の物の捉え方をする椿。こういう点でも2人でいるとバランスが良いのかもしれません。

タイトルからして盛大にネタバレしていると作者様が書いておられましたが、その分ハピエンまでの過程が重視されていて、2人の心情が変化していくのを楽しめたので良かったです。
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