2055【単行本版】
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2055【単行本版】

三月えみ

ノイズが愛おしい、不完全は美しい

ネタバレ
2026年1月20日
このレビューはネタバレを含みます▼ 単行本に纏まっていることを知らなかったです。
フォロー様方ありがとうございました。

そう遠くない未来にこうなるかもしれない世界線のお話。
死ぬことって消えてなくなるだけじゃないんだな、命をつなぐってこういうことかと腑に落ちます。
そのつながる先は子孫とは限らない、性別も関係ない、もはや人間とも限らない、それでも自分たちが過ごしてきた時間で生まれたノイズがこうやって繋がっていくのならAIが支配する世の中もそう悪くはないとも思いました。

『2055』の2人に泣かされて、それでも最後まで読めばあれはハピエンだったのだと更に涙。
そしてやはり何といってもあとがきを読んで『2072』『2075』を再読したら鳥肌でした。
静かな仕掛けに確かに何度も何度も確認しながら読み返してしまいます。この感動体験は味わわないと損ですね。

どんな世の中になっていこうと人間が生み出してきた数々のノイズは何かしらの形で残るんだろう。きっとそれは説明も解析もできなくて、どんなに完璧にトレースしても彼らのようにまた思わぬ形で生まれ続けるのかもしれません。
その愛おしいノイズがある限り、万物は完全なように見えてどこまでも不完全であり続けるのだろうし、不完全だからこそ世界は醜くて美しいんだろうと思います。そんな壮大なことを彼らの関係性に号泣しながらうっとり考えてしまうような作品です。

あのホーキング博士が「宇宙は、そこに愛する人がいなければたいした意味はない」と言っていたけど、もっと広義で捉えれば同じ意味なのかもしれないな、となんとなく答え合わせができた気がしました。
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