このレビューはネタバレを含みます▼
純粋な恋心がありながら、育った環境からか、それまでの生き方で作り上げられた性格なのか、自分の心が選んだただ一人の好きな相手への接し方が解らない。脅して、縛り付けて、傷つけて、無理やりにでも自分の手元に置いておこうとする残忍な男。そんな凍月颯の中の優しさが今までの生き方を押さえ込んだのはいつだったのだろう。残忍な男に身も心もズタズタにされながら、さらに追い打ちをかける母親の自分を役立たずのお荷物だと言う言葉、くそみたいなヘルパーの母親への接し方、奏を騙していた売店の璃子、そんな中で奏が何とか自分を保っていられたのは凍月への復讐を遂げることだけだったのに愛してしまった。奏が自ら崖から身を投げたをと思い込み、意識不明の奏を連れて2人で死から逃げようと、あるいは2人でともに死のうと長い旅を続ける。献身的な介護を続ける。いつ目覚めてもいいように身体に傷をつけず、清潔を保ち、話しかけ、抱きしめて温めあって、プライドを捨てて人に頼る事を覚え、人に感謝することを覚えて。愛する人のために涙を流すことを学び、いったいどこまで相手のために尽くすの。後悔だけではない、許しを得るためでは無い。意識のない奏に生かされ続ける幸せ。凍月は奏の意識が戻らなくても何年でも何十年でも彼に寄り添っていける愛を手に入れたのだと思う。2人が幸せそうなエンディングで良かった。