ディセンバー~逃げ出したあの日に出会った君~【タテヨミ】
」のレビュー

ディセンバー~逃げ出したあの日に出会った君~【タテヨミ】

SAMK/meriG

闘争と回復

ネタバレ
2026年5月2日
このレビューはネタバレを含みます▼ 極優性アルファ・シンと劣性オメガ・ヨヌの再会BL。運命と本能の間で葛藤し、権力闘争に翻弄されながらも、互いの存在に希望を見出していく物語です。

オメガの権利・地位向上、アルファによる犯罪の厳罰化を求めるデモや、オメガに連帯する女性が出てくるところが韓国漫画らしく眩しかったです。財閥-庶民・男-女・アルファ-オメガという権力勾配、強者の中の序列、構造的格差…複雑な階層社会を生きる、持たざる者、弱き者の抵抗の物語でもありました。

【1部】
復学した大学で優性アルファのシンと出会い、惹かれていくヨヌ。しかし、ヨヌはアルファによる性暴力のトラウマにより、葛藤に苦しむ。一方で、ヨヌへの想いが膨らむシンの裏の顔も明らかになっていく。

【2部】
避け続けてもヨヌの前に現れるシン。本能を排除した関係を望みながらも、欲望に抗えないヨヌ。二人が心を通わせる裏では歪な家族関係、性差別、加害者の逆恨み、そして権力闘争が迫っていた。

【3部】
拉致されたヨヌは、そこでシンの秘密を知る。人脈と権力を駆使し、拉致事件を冷酷に処理するシン。脱出に成功したヨヌは知人の助けで病院へ。しかし、駆けつけたシンにも恐怖する。運命と恐怖と執着が絡み合う中で、ヨヌが選んだ未来は――。

ヨヌを気遣う叔父夫婦、オメガ同士の連帯、女性達との連帯の描き方がとても良かったです。ラブストーリーというよりは、トラウマを乗り越えようとする過程の中に恋愛があるように感じました。

法律ですらアルファを基準に回る世界では他に方法などないかもしれませんが、暴力で暴力に対抗する不毛さ、階級差を利用した解決には複雑な気持ちが残ります。
財力と権力を持ったアルファの庇護がなければ、逃げ隠れて暮らすか、怯えながら警戒して過ごすことになってしまう。そういう立場のオメガや女性の方が多いであろうことを思うと、不条理でやるせないです。しかし、シンの力がなければ餌食になっていただろうし…無力…。

そんな不条理な社会構造を懸命に生きるヨヌが、シンや周囲の人々の助けを借りながら、自らの意思で闘い、自らの足で一歩を踏み出す、その姿に励まされ、勇気を貰える物語でした。
いいねしたユーザ1人
レビューをシェアしよう!