一人合点して、彼が架空の恋人に怒る、そこが当人真面目にヒロインを心配しての事であるだけに、苦笑というか、道化者ポジションというか。言うに言えぬ相手に奥歯の挟まった物言いをするヒロインにしてみれば、陽動作戦でもなく騙す意図もない。言える訳がな
いと思っているからこその、苦肉の第三者置き換え。急場の、一時しのぎ的な行為に過ぎないのに。
人物の絵が粗い。 ハリーの魅力が薄い。 他の岩崎先生作品の男性はもっとセクシーだ。
ヒロインは地味な外見という設定で仕方ないところもあるが、絵に綺麗さはやはり欲しい。HQなんだもの。
ストーリーはその設定の平凡さを、子犬エピソードの発展や周囲の人間配置で救っている。
ヒロインの内心のドキリを視覚化した場面、ユーモラスなトーンに色づけて話を明るく面白くする一方、気持ちがばれないようにしてきたこれ迄の演技との一貫性から、彼に見抜かれない形での内面描写が必要だったのでは?
コミカルな中に共感できる思考回路が散りばめられていて、彼サイド描写によって、二人の滑稽なねじれを、彼の感情推移も巧みに伝えられて、片想いの切なさが図らずも彼をあさっての方向から刺激するラブコメ。
8頁が特に良かった。コマの提示方法というか、アングルとか、ヒロインの慌てかた、驚きかた。それと、平然とやりたいようにしてくる、彼なりの部下の最終日の送り出しかた。
84頁のキスシーンも綺麗。
こうしたパターン(相手が知らないで自分は盛り上がって)のストーリーで読み手が味わうじれったさや、ヒロインには想定外の展開での戸惑いに、巧みに乗せられて興が募る。ささやかな片想いが、その相手の名を伏せたまま、どんどん心情吐露に追い込まれ、深みに追い込まれる程に揺さぶられて行くのが微笑ましくて、じんわり風向きが良くなっていくことが、我が事のように嬉しい。この作品の持っていきようが、一見して仕方なしの成り行き任せに見せていて良い。
彼視点を途中何度か披露しながら、クライマックスはヒロインに比重高くなるが、彼の二ヶ月?の様子、言葉のみで語られていて、私的には覗き見願望残す。
それにしても、キャンディありがとう、な話。二人はもう、彼女に背を向けては眠れない。
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