物語を出来事の一つ一つパラパラ読んで眺めるというより、シチュエイションそれぞれで立場を想像しそのときどきのキャラの気持ちに入り込むと、辛さ切なさが痛いほどわかることの多い作品を描かれる先生なのだと思う。
「会議室の恋人」を一足先に読ん
でいたので、このセットでなく、結局バラバラに読んだ者だが、「つまずいたプレイボーイ」も「裏切り」も、悪くなかったので、こちらにもレビューを出そうと思った。
会議室の恋人、ヒロインの苦労と、それを知らない彼とが、互いにいつまでも忘れられない関係を通じて相手をしっかり理解する涙もののストーリー。ちょっとそれをここで?とは思うものの、一方、ちょっと地位があるだけですぐ個室を与えられる海外ものでは、その執務室ではそんなシーン珍しくないため、そこ疑問を挟まなければ、やっぱり両人互いに好きでたまらなかったということが話の中に大いに伝わるいい作品。
つまずいたプレイボーイ、切羽詰まっての大胆行動が運命の扉をあけるという勇者の話だが、そこの設定よりも、彼のヒロインへの気持ちが盛り上がるさまが素晴らしい。また、町や職場を気持ちよく驚かせて、町の有名人と結婚するということへの一般人の想像の上のリアクションを、そのままこの話はやってくれる。ヒロインは結婚するならばと自爆覚悟の一か八かだったわけで、人を驚かせるために結婚したわけではないため、そのヒロインのキャラが余計に話の面白さを引き立てる。彼のヒロインに対する開眼ぶりは、よくあるプレイボーイものの王道。今までにないタイプに引き込まれてしまう、というもの。このようなきっかけでもない限り向き合うことのなかった二人が、この結婚という扉を思いきって開けたら知らなかった世界の扉をも開くことになったというのよく表されていて、この作品もホントに楽しめる。
裏切り、最近読んだが、この評価が難しいところだと思った。ヒロインが彼を好きな気持ちはものすごく伝わってくる。この点は荻丸先生の真骨頂ここにあり、なのだが、策にはめられた彼の怒りの、ヒロインへ向けていた部分の解消の過程が、いくらそのアクシデントのインパクトが大きかったによ、何となくそのアクシデントでうやむや感。若い二人は周囲の振る舞いの犠牲者なだけでした、という話で、被害者の構図はあるものの、二人の関係修復の絵解きが、関係好転をもっと効果的に予感させて欲しかった。
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