「あなたは外科医なの?」看護師のグルナールはダンテと名乗ったその男をじっと見つめた。民族紛争が続くコーカサス地方。グルナールは武装集団に占拠された市庁舎で負傷者の手当をしていた。男たちの仲間だとばかり思っていた彼が、ありあわせの医療器具で、重傷患者の応急手術を始めたのだ。その手際のよさは、彼女が思わず見とれるほどだった。彼はどの組織にも属さず、独りで医療活動を行っているという。これほど優秀な医師が、なぜそんな危険を冒してまで……?彼の話がまだよく信じられないまま、グルナールの胸は高鳴った。■ディザイアでも人気のオリヴィア・ゲイツの作品をお贈りします。過酷な紛争地帯で出会った二人。死を前にして、なお激しく燃えあがる至上の愛を描いた作品を、どうぞお楽しみください。