原爆文学の傑作。著者の大田洋子は広島原爆被曝の体験直後から「屍の街」を書き綴った。1948年に中央公論社から発売されたが、GHQの検閲を考慮した削除版だった。無削除版は1950年に冬芽書房から上梓(絶版)。ITmedia 名作文庫では冬芽書房版を電子復刊するとともに、巻頭には同じく広島原爆被曝をテーマにした「夏の花」で有名な作家、原民喜による解説を掲載。「いまだ癒えぬ傷あと」「一九四五年の夏」「原子爆弾抄」「略年譜」「著作一覧」も収録。
目次:
序
いまだ癒えぬ傷あと
屍の街
鬼哭啾々(きこくしゅうしゅう)の秋
無欲顔貌
運命の街・広島
街は死体の襤褸筵(ぼろむしろ)
憩いの車
風と雨
晩秋の琴
一九四五年の夏
原子爆弾抄
大田洋子略年譜及び主要著作一覧(編集部)
著者について:
1906年広島生まれ。8歳のとき父母が離婚し、親類の大田家の籍に入る。江田島、尾道、大阪、東京で、小学校教師やカフェの女給として働きながら小説を書く。長谷川時雨主宰の『女人芸術』に参加。1939年に中央公論の懸賞小説に、1940年に朝日新聞の懸賞小説に入選。以後、小説家として本格的に活躍。1945年、疎開先の広島で被曝。被爆とその後遺症をテーマにした『屍の街』(1948)『人間襤褸』(1954)『半人間』(1954)などで原爆作家として有名になる。1963年没。1982年に「大田洋子集全4巻」が三一書房から刊行された。