鬼は人を怖がり、人は鬼を怖がる、そんな和風ファンタジーの世界です。主人公の千景は、鬼斬り隊の隊長、相馬に強烈に反発しつつも惹かれていきます。でも千景の心には幼なじみの鬼のたっちゃんがいて、目の前にいる人と心の中にいる人との間で揺れ動く気持ち
が切なく描かれています。「千景は俺の灯だ」というセリフが本当に生きていて、千景の存在、言葉を、生きるたったひとつのよすがとして抱えてきたことが、説明はないけれど感じられるようになっています。千景の強さとたくましさ、相馬の孤独と必死さがリンクしていて、とても魅力的な物語になっています。鬼に噛まれると「鬼憑き」になり男を誘うというエロも上手く絡めていて、400ページ超えのお話があっという間に読み終わりました。ひとつ気になるのは、角を折った鬼が早死にするという設定です。その設定についてはラストまで何も言及されないままだったけれど、そこは救済が欲しかったな。
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