所長は手を伸ばしてアルバムのページを捲った。そこには、森林をバックに果物にありつく黒っぽい動物の白黒写真が貼られていた。「音嘗メ。現地ではポドゥル・クルラと呼んでいました。最初は小さな犬かと思ったくらい、黒くて小さな生き物が茂みから出て来て、辺りを伺いながらバナナに寄って行きました。その途端、すーっとボリュームを絞るようにラジカセの音が聞えなくなったのです…」音を嘗めて周囲を無音の世界に変える「音嘗メ」、通称「ナメちゃん」。ある日、こっそり研究所を抜け出した。世話係と共にナメちゃんを探しに行くのは、通りすがりの雑誌記者。果たしてこの二人は、ナメちゃんを無事保護できるのか?