フィギュアスケート全てへの愛の溢れ出る言葉でありながらただの感情の押しつけは無くて、客観的な分析が、読んでる私のスケート観を広げ、高めてくれる、フィギュアスケート鑑賞の基本書超入門書的技術解説書。また、採点競技故に、あまり人の着目の対象にな
りにくい、点数を稼げない部分があるこのスポーツの凄み、音楽と不可分の総合的な価値、それを、内部の専門家解説ではないからこその伝え方で、こちら素人の読み手に伝えている。著者のファン目線が、温かいこと。そこに、出版時である平昌五輪迄、40年弱に渡ってフィギュアスケート史に寄り添う応援をしてきた豊富な経験値が語らせる、冷静な観察力がある。そのため、熱いファンでありながらも、読み手を外野に置いてけぼりにしない姿勢が感じ取れて読みやすい。
五輪連覇云々が話題に上った時期に発刊の本書。あれから北京五輪があり、羽生選手は現役引退、プロ転向した。タイトルに羽生結弦氏の名を使って、恐らく購読層、関心を持ってくれそうな潜在読者へのアピールもあったかと思う。ただ、個人名を前面に出してはいるものの、販売戦略的な書名付けの狙いを超えて、俯瞰的な性格を、この上梓の機を手放さず備えているようだ。
試し読みレベルで口はばったいが、しかし、本書は、長年フィギュアスケートの世界をオーディエンスのポジションで見守ってきた著者が、何人ものフィギュアスケーターをリスペクトし、そしてその素晴らしさを解いて明かしてくれている、羽生選手個人のみに絞り込んだ訳ではない、ということだけは、よくわかった。
本編は、次のフィギュアスケートシーズン到来迄に時間が許すとき読んでおこうと思った。
一筆断っておく。羽生選手の発見の早さ自慢は出来るし注目してやまなかったし、その後の軌跡も我が意を得たりではあって色々買い物もしたのだが、私はTVのMCが無関心だった扱いの頃よりも遥かに古い宇野選手サポーターである。
目次から、男子女子シングル選手総数20名余への、どんなところが凄いか、についても記述があること、申し添えたい。
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