何故、ぼくの従兄弟はイスラエルで片目を失ったのか。何故、バイオリンを捨て戦場カメラマンになったのか。何故、はるかイスラエルの地から、少佐は手紙を書き続けるのか。十七歳のぼくと、年上の美しい青年、そして若きイスラエル軍人の三人の危うい関係。それらが、封印された過去の悲劇を呼び起こし、さらには未来の悲劇へと彼らを追いつめてゆく。
舞台は平和な日本と紛争のイスラエル。閉ざされた過去が救いを求め、一筋の未来をまさぐる。いつしか光と影は、時空を飛び越え壮大なスケールで読者を翻弄してゆく。究極の愛と死へのレクイエムこそが、この物語である。