藍川京作品の愛読者のやなぎやこ、本アンソロジー収録の「誘惑の季節」につきレビューする。なお本作は図書(単行本・文庫)のかたちでは他に出版されておらず、雑誌「特選小説 1997年6月号」に掲載されているのみという点でレア作品。ちなみに雑誌では
、山本タカトの挿絵がよくマッチしていて秀逸。
脱線したが、主人公は二十代半ばの若妻。世代の近い官能小説家に似ていたため人違いされたことが発端になり、ロマンスへと発展していく。おりしも主人公は夫が仕事が多忙なことから夫婦間の営みがご無沙汰で、性の渇きに直面していたこともあって相手の男の誘いに乗ることに。藍川作品の中では斬新な筋書きで、男女の絡みに至る過程で大いに気分が盛り上げられる。性描写の部分ははわりと短く、その一方で、一戦交えた後の文章が長く続くが、その短所が短所と思えないほど総合点で高評価。
さて、アンソロジー全体の評価であるが、作者や読者層およびその好みまで多岐に亘るため、ニュートラルとする。
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