クリスマスの夜。百キロ以上のスピードで暴走する車を、二台のパトカーが猛追していた。時は二時間ほど前に遡る。その男は、偶然、火事の現場に遭遇する。家の外で助けを求める母親。二階の窓からは、泣き叫ぶ娘の姿が見える。男はこの状況に運命を感じていた。男が取った行動は、誰も予想しないものだった。燃え盛る家の中へと飛び込んでいったのだ。それから五分足らずで、男は家から出てきた。胸には十歳の少女をしっかりと抱きかかえている。周囲から、歓喜の声がこぼれる。しかし、男が次にとった行動に周囲は唖然とした。男は少女を母親に手渡さず、車に乗せてそのまま逃走したのだ。新潮ミステリー大賞作家が描く、ある双子の男女にまつわる二十余年の物語。さみしさが、ぬくもりが、心に触れる傑作青春ミステリ。