2022年本屋大賞3位、おめでとうございます!!
「イエスかノーか半分か」の一穂ミチ先生のノンBL、ノンラノベで、色々な有名な賞の候補にあがり、賞を獲得された文芸書です。
同じ世界で生きている様々な家族と秘密のお話、6つの短編集です。
各お話はほんの微かに繋がっていています。
さすがの読みやすさ、面白さでページを繰る手が止まらず一気読みでした。
お話の形式もミステリー、書簡小説、ラノベ調と飽きさせず、先生の多彩さを改めて実感しました。
これが二足の草鞋での創作活動とはとうてい思えない完成度です!
どのお話もどの家族も歪んでいて心穏やかには読めないのですが、中でも「ピクニック」は秀逸です。
紡がれる内容もさることながら、全体に漂う謂れのない不気味さは何なのか?
それがラストでストンと納得され、身体中鳥肌が立ちました。
ネタバレ厳禁案件です。
さらにさすがのBL作家さまと申しましょうか、LGBTQIA+についてのお考えの深さと言ったら!
泣けて泣けて、ちょっと辛かったです。
先生が「祝福と呪いの根源」と仰る家族の、綺麗事では済まない部分がぎゅうっと詰まった作品です。
けれど誰もが多少なりとも抱える家族の問題を、解ってくれる、と思わせる優しさがあると思います。
ラストの「式日」の中で言及されている向田邦子の作品は「字のない葉書」の事でしょう。
教科書的に美談とされるこの話を、歪んだ家族の対極として出した事。
「花うた」での作中作品『どろぼうの男の子』の存在感。
どんな家族であれ、どんな繋がりであれ、何もかも取っ払った最後に残る純粋な心が希求するモノとは?
面白い!だけではなく身につまされ、考え、糧となる作品だと思います。
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「魔王の帰還」は某青年誌にてコミカライズされているので目にした方もいらっしゃるかも?
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「スモールワールズ」刊行記念の特別ショートストーリー「回転晩餐会」が無料で出されています。
シーモアでも読めますので興味のある方はぜひ!
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