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この書物は、高度成長下にあった最近一〇年あまりの日本経済を解明し、今後の政策について考察することを目的として書かれた。
本書のなかでも触れておいたように、「高度成長のひずみ」是正論や、「安定成長」論は、構造変化の事実を閑却し、政策によって、たとえば戦前のような「ありしよき日」を復元できると考えるところから出発する。あるいは全経済的な政策の目標や体系を無視して、たとえば企業利潤率の上昇や、物価の安定など、特定の政策目標のみを追求しようとする、かたよった問題意識から出発する。現代の経済政策の最高の目標が、完全雇用と国民の生活水準の向上とに置かれなければならないことは何びとも否定しえないであろう。利潤率の向上や物価の安定は、政策の副次的目標でありえても、それだけを政策の主要 目標とすることは許されないのである。さらにそのための政策体系が、現実の日本経済の正しい判断に立って組み上げられねばならぬこともまた自明であろう。にもかかわらず、今日の日本経済が当面している事態についての冷静な判断が財界筋に不足しているのみでなく、エコノミストの間においても欠けている場合が多いように見うけれらるのは遺憾である。個々の企業のために最善の政策が全経済にとっても最善とは限らない。ときとして全経済的に見るとマイナスの場合さえおこりうる。本書は、そうした問題を考えなおすために役立つことを期待して書かれた。(本書「はしがき 一」)
目次
はしがき
Ⅰ 日本資本主義の戦前と戦後
1 歴史的条件/2 経済発展と「二重構造」の成立/3 戦後日本経済の推移と政策
Ⅱ 成長と変動
1 成長パターンの国際比較/2 景気変動のメカニズム/3 金融と財政の機能
Ⅲ 重化学工業化
1 歴史的推移/2 重化学工業化の意義とメカニズム
Ⅳ 独占、中小企業、農業
1 現代の大企業の行動/2 中小企業、農業および「二重構造」
Ⅴ 雇用と賃金
1 経済成長下の雇用/2 産業構造の変化と賃金/3 労働市場の変貌と労使関係
Ⅵ 物価/物価上昇の現実/物価上昇のメカニズム/コストインフレーション論
Ⅶ 所得分配と消費
1 経済成長と制度的諸要因/2 所得分配の変貌と分配率/3 家計の消費と貯蓄
Ⅷ 世界経済と日本
1 一九六〇年代の世界経済/2 開放体制への移行の意義/3 後進国開発問題
むすび 経済政策の方向
1 日本経済の動向と進路/2 経済政策の目的と方向
補論 一九六五年不況
1 一九六五年不況とその回復/2 戦後景気変動の性格/3 現状と将来
索引
索図表引