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私たちは緑色植物がなしてきた光合成に依存して、食糧を確保し、からだをつくり、エネルギー供給を得ている。一方において、今や地球上の植物は消費とのバランスを考え、環境の破壊的使途からこれを守らねばならないという認識が高まってきている。
私たちの文明生活を築くのに、植物が果たしてきた役割を理解することは、私たちの子孫に有用な植物の生命の特質を守り、さらに開発していく上で役立つとおもわれる。(「日本語版へのはしがき」より)
この『植物と文明』はさまざまな分野の学生の皆さんにも広く読まれて役立つと信じている。それは人間が植物とともに歩んできた歴史をもつからであり、現在それに関する植物学の基本的理解が要求されている時代にあると思うからである。とりわけ、この『植物と文明』は大学の教科書という形式にこだわらないで、読者自身で読み得る内容をもっているといえよう。自然の経済のなかで、自然自身を豊かに育むように、人間と植物が理解しあい、効用を発見していくことに、この書物が役立つことを私は期待している。(「はしがき」より)
目次
日本語版へのはしがき
はしがき
Ⅰ 植物と先史時代 農耕以前の植物利用 根栽類と穀類 農耕の起源/多目的利用の植物
Ⅱ 植物と有史時代 植物学におけるギリシアの先覚者たち/本草書/マンドレイク―神話と真実/植物学と植物園/栽培植物の起源についての研究/植物探検
Ⅲ 探検と開拓を刺激した植物 香辛料/旧世界の香辛料/新世界の香辛料/ジャガイモ飢饉とアイルランド人の移住
Ⅳ コロンブス以前に新旧両世界で交流があったか――植物は語る ココヤシ/ヒョウタン/サツマイモ/ラッカセイ/トウモロコシ/ワタ/まとめ
Ⅴ 必須植物としてのコムギ コムギ三群の起源/パンコムギの栽培/栽培コムギの未来
Ⅵ 必須植物としてのトウモロコシ 新大陸からの贈り物/トウモロコシの歴史/雑種トウモロコシ
Ⅶ 嗜好品としての砂糖を得る植物 サトウキビ/サトウダイコン/その他の砂糖源
Ⅷ ふたたび必須植物としてマメ類と油料植物 マメ類/ダイズ/マメ科牧草/油をとる植物/アプラヤシ/ペニバナ
Ⅸ 熱帯の国々からの飲料植物 チャ/コーヒー/ココアまたはチョコレート
Ⅹ 発酵 酵母菌(イースト)/アルコール発酵/醸造/ぶどう酒作り/蒸留酒の製造/発酵のその他の面
ⅩⅠ ゴム物語 パラゴムノキ/ゴム代用品/パラタゴム
ⅩⅡ 樹木の貢献 (詳細略)
ⅩⅢ 薬用植物の利用(詳細略)
ⅩⅣ タンニンと染料(詳細略)
ⅩⅤ 人間に関する植物の将来(詳細略)
参考文献――さらに学びたい人びとのために――
訳者あとがき
事項索引 学名索引