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いわゆる現代資本主義の中心的問題たる金融資本、農業問題、民族。植民地問題について鋭い問題提起をし、かつその分析視角を与えたのが、他ならないレーニンであった。
われわれは、レーニン理論を研究することによって、そこに現代の資本主義世界を分析する方法的基礎を得ることができるであろう。さらに、小著で紹介するように、すでにレーニンは、十月革命期から晩年にかけて、社会主義建設の難問をもなす農業問題や、社会主義国家間のあるべき関係についても、その理論的探索の道に就きはじめていた。不幸にして、レーニンは道程の緒で朴れたのであるが、こうした資本主義後の世界についてのレーニンの展望は、現代社会主義圏の錯綜した事態を分析するための、批判的視点を与えてくれるであろう。本書では、レーニンの組織論、農業理論についての考察に、民族問題についての小篇を加えたが、彼の金融資本分析については省いた。『帝国主義論』については、筆者の考えるところを、最近、他の機会に発表したからである。
筆者はスターリンの社会科学の方法が、その初期から晩年まで一貫しており、とくに一九二〇年代末期から彼の指導的責任のもとに実現されたソ連の政治・経済体制は、まさにスターリンの理論の実践的帰結に他ならなかったことを、ここでは明らかにしたかったのである。価格メカニズムを介して展開する資本主義とは異なって、社会主義社会の建設は一定の生産力水準を前提としても、いわば無数の選択肢が社会成員に委ねられるために、社会成員によって、あるいはそれにたいして与えられる指導的方針の如何で、革命後の社会のあり方も変るのである。したがって、ソ連社会の分析にさいしては、その指導的方針となったスターリン理論の分析は不可欠のものといってよいであろう。
(中略)なお末尾の補論「スターリンの『農業集団化』は、小演劇誌に、ショーロホフの『開かれた処女地』の上演のさいにもとめられて、その時代的背景として書いたものである。所載誌の性格はいわゆる学術誌ではないが、内容的には第六章を補うものと考え、敢えて収めることにした。(「はしがき」より)
目次
はしがき
I レーニン主義の展開
第一章 組織論――『なにをなすべきか』によせて
第二章 農業理論――レーニンの十月革命への道
補論 レーニンはいかに「記念」さるべきか
第三章 民族問題― スターリンとの対立を中心に
Ⅱ スターリン主義の理論的本質
第四章 史的唯物論
第五章 資本主義論
第六章 社会主義論
補論 スターリンの「農業集団化」―――ショーロホフの『開かれた処女地』の時代的背景
引用文献
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