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死にゆく者の主体性をどう認めつつ,これを迎える他人と社会の側に,現実にどのような原則が求められるべきなのか.安楽死をめぐって微妙な論点の一つ一つに分け入り,「死の看護」の極限状況のもとに人間の「生」の場面をさし示す生命倫理学.
目次
はしがき
序章 安楽死とは何か
一 安楽死の概念 美しく安らかな死/死の管理/近代合理主義の精神/安楽死の定義
二 安楽死の種類 なにが無意味な生存か/行為と死の因果関係/生命主体の意志
第一章 「人間の尊厳」と「死苦からの解放」
一 尊厳死――非人格的生存の拒否 尊厳死思想の言い分/尊厳死思想の意義/尊厳死思想の難点/尊厳死は許されうるか
二 厭苦死――苦痛しかない生存の拒否 痛みと人間/厭苦死の要請/いわゆる安楽死/厭苦死の倫理的評価
第二章 安楽死の社会倫理学
一 共同体と過度の負担 人間と社会/共同体への過度の負担
二 放棄死――親しい他人に過度の負担となる生存の拒否 緊密な連帯者と過度の負担/放棄死の要請/放棄死は許されうるか/社会福祉の倫理
三 淘汰死――共同体の存立繁栄に有害無益な生存の拒否 全体的配慮と国家共同体/国家的存亡の危機における洵汰死/地球の人口爆発防止と淘汰死/優生学的関心と洵汰死
第三章 安楽死と人間的行為
一 人間的行為と死の因果関係 人間的行為/直接安楽死と問接安楽死
二 消極安楽死=不作為安楽死 消極安楽死とは何か/不作為の種々相/消極安楽死の倫理的評価
三 積極安楽死=作為安楽死 積極安楽死とは何か/作為と不作為の区別/作為安楽死の倫理的評価
四 間接安楽死=結果安楽死 間接安楽死とは何か/間接安楽死の倫理的評価
第四章 安楽死と自己決定
一「いのち」をめぐる自己他人社会 人間と「いのち」/任意非任意不任意
二 任意安楽死における任意性 任意/意志確認の問題/自己決定の倫理
三 解釈的意向の諸問題 生命主体の同意/代理者意向/解釈的意向/客観的普遍的意向
四 同情と安楽死 同情以前/理性的同情
五 安楽死をめぐる社会と他人 協力の義務/非任意と強制
終章 安楽死の論理と倫理
一 「安楽死の思想」の問題提起 「安楽死の思想」の基本構造/「安楽死の思想」の生命観
二 安楽死の倫理 価値選択と倫理/自然悪と倫理悪/極限状況の可能性/「生命の尊厳」原則とその限界/安楽死選択の倫理的正当性
三 「安楽死思想」の問題点 「生命の質」本位/一般状況における原則/極限状況阻止への責任放棄/「良心の痛み」なき合理主義
結び
注