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本書は、一九七九年に出版した前著『子どもの能力と教育評価』を改訂したものです。それを私は、評価はテストだの選別だのといった、値踏みするような仕事に封じ込まれてはならない、人をそれぞれの個人として形成するためのはたらきをするものでなければならない、という考えに立って書きました。
文化が人を作りますがその人がまた文化を育て創造します。教える側の価値や理想を一方的に基準にするのではなく、それらと育ってゆく「人」との相互作用の媒体としてとらえてみたいのです。この意味で、物差で長さをはかるのと教育評価とはちがいます。物差は何に対しても一定でなければなりませんが、教育評価は評価対象に寄り添って適切化しなければなりません。ことに、総合教育だの心の教育だのということになるとそうです。「個」をのばすということになるともっとそうです。本書できれいな解答を出すには私の力がまだ不足だったと思います。しかし問題を感じ方向を模索しました。この模索を通じ、新しい教育の中での評価のあり方を考えるきっかけにしていただければ幸いです。(「はじめに」より)
目次
はじめに
1 積極面に注目した評価を
評価が人をつくる/積極面に注目する評価と失敗に注目する評価/(以下略)
2 欲目も大切/ピグマリオン効果
欲目を大事に/客観性は一面性を内蔵する/入試モデルの過剰支配/(以下略)
3 何のための評価か
文脈抜きで方法の適否をきめることはできない/教育行政の資料としての評価/(以下略)
4 データの見かけと奥
読心術のテスト?/愚間か賢間か/正面から聞くとたてまえが出てくる/仲間の評判/5 信頼性と妥当性/あてになる測定とは/(以下略)
6 芸術の理解になぞらえて
定義にかえて/学習者は個性的な存在/鑑賞家の視点/批評家の視点/(以下略)
7 減点主義と一次元主義の克服
プラスに注目して/減点主義と一次元主義/いろいろな軸による評価/(以下略)
8 能力とその背景条件
創造性の問題をめぐって/ATI/セサミ・ストリートの実験/能力は誰のものか/(以下略)
9 絶対評価は可能か
比例尺度と間隔尺度/相対尺度の原点/相対尺度の単位/いわゆる絶対評価/(以下略)
10 大学入試の問題をめぐって
いまの入試とは異なった選抜の仕方は不可能か/文革下の中国の場合/(以下略)
11 総合的な学習、奉仕活動、心の教育
新しい試みに新しい評価を/羅生門的評価/フィードバックをちりばめる/(以下略)
12 新しい時代の教育評価
学歴社会から資格社会へ/競争社会から共生社会へ/(以下略)
注