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大学に籍をおいて、研究と教育とに従事してきた私にとって、現代の大学と学問の問題は、長い問の大きな関心事であった。大学とは何であるか、大学はこれでよいのか、という問いが、いつも私の前にあった。
大学紛争のさ中に、私は学生が提起した現代の大学と教育の在り方に、経済学の研究者として答える必要があると考え、教育投資論や教育システム論などを踏えながら、『教育の経済学買読売新聞社)を書き進め、一九七〇年夏に刊行した。大学と学問と教育の三つは、それから十年間、私の大きな関心事であった。
そこから「大学に未来はあるか」というような問も発せられることとなる。これらの問題に答えようとしたのが、本書の第一のテーマである。
第二のテーマは、大学教育と裏腹の関係にある「学歴社会」、(中略)そこで私は日本はいかなる意味で学歴社会であるのか、日本の大学は階層社会の中でどのような役割を演じているか、を明らかにしようと試みた。(「はしがき」より)
目次
はしがき
Ⅰ 現代の大学と学問
1 大学の生命と使命 1 象牙の塔からバベルの塔ヘ/2 楽園喪失/3 プロメテウスの火/4 「憂いの都」/5 方向感覚の喪失/6 分裂症状/7 順礼の旅/
2 現代科学の基本的性格――社会科学における世界観の問題―― 1 経済学の生誕と文化諸科学/2 社会諸科学の専門分化/3 マックス・ウェーバーと客観的認識/4 近代科学の性格/5 価値基準と歴史像/6 いわゆる二つの経済学について/7 仮説と前提、社会科学と世界観
3 現代の学生と大学 1 書けない・読まない・考えない/2 大学の大衆化/3 情報の洪水/4 学生の自己防衛/5 ガイダンスの必要性/6 感性の論理/7 現代科学の道具性/8 人生の視座
Ⅱ 現代の社会と教育
4 教育の社会的構造と機能 1 階層の流動性と学校/2 戦後社会と学校教育/3 戦後教育の矛盾/4 教育と価値体系
5 教育の不経済学 1 学校教育はなぜ問題なのか/2 学校教育の効用/3 なぜ学歴社会か/4 科学の道具性/5 教育の肥大か衰弱か/6 何か問われているのか
6 「学歴社会」の実像 1 学歴社会の国際比較/2 日本における学歴の意味/3 学歴の役割/4 学歴社会の虚像と実像
7 自学自習
Ⅲ 経済学の基本的性格
8 経済学と道徳哲学 1 道徳哲学の一部としての『国富論』/2 古典派経済学と道徳哲学/3 イギリスの大学と道徳哲学/4 道徳哲学からの経済学の独立
9 政策的発想の限界と効用 1 政策的提言の性格/2 短期的政策と長期ビジョン/3 国民生活の展望と展開
新しい大学像を求めて――結びに代えて――