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子どもの教育環境の悪化に目を向けると、非行の発生は特定できない。青少年非行は、「貧困型」から「遊び型」へ移った時点で、普通の家庭の普通の子どもが日常的におかす逸脱行為になったのである。非行青少年は、 一般に自制心や規範意識が弱いと言われているが、このようなパーソナリティ特徴は広く一般青少年にも見られる。程度の差はあれ、たいてい「非行性」を備えている。もちろん、この「非行性」を準備したのは、本人の素質よりも彼らを取り巻く社会環境である。この意味で、青少年非行は「構造非行」である。また、この意味では、非行青少年と一般青少年を区別する理由はない。彼らはともに、おとなたちから「自然と社会と友情」を奪われた人間である。
本書は、右に述べた非行問題をじかに取り扱ったものではないが、これを含めて子どもの「発達の危機」の諸相を具体的に考察しているので、非行問題についても理解が得られるだろう。本書の主な内容は、子どもの社会化エージェントとしての家庭、学校、マス・メディアの病理的側面を実証的に考察したものである。具体的には、家庭のしつけ喪失、学校の組織葛藤、 マス・メディアの機能肥大、さらにこれらの社会化エージェント間の対立と矛盾が子どもにどのような影響を与えるかを対象とした。もちろん、これらの考察は、社会化エージェントの本来の役割を否定するものではない。読者はまず終章(Ⅶ)から読んでいただきたい。(「まえがき」より)
目次
まえがき
I しつけとは何か
1 しつけの意味/ 2 しつけの「学校化」/ 3 核家族化のインパクト/ 4 慣習から習俗へ/ 5 「厳父慈母」と母親支配
Ⅱ しつけのメカニズム
1 親の生活と価値観/ 2 子どもへの学歴期待/ 3 「姿なき父親」/ 4 管理される子ども/ 5 勉強と友だち/ 6 テレビと子ども部屋
Ⅲ しつけは復権できるか
1 自立から親依存へ/ 2 小市民化と権威爽失/ 3 「干渉型」から「放任型」へ/ 4 しつけに欠ける親世代/ 5 学校依存のしつけ
Ⅳ 教師は道徳的権威か
1 「順良、信愛、威重ノ気質」/ 2 揺らぐ父性原理
Ⅴ 子どもの学校生活
1 学校は楽しいか/ 2 自信を喪失して行く子ども/ 3 成績と人気の自信のジレンマ/ 4 友人と仲間/ 5 仲間集団の突出
Ⅵ 適応から逸脱へ
1 小さな「マージナル・マン」/ 2 発達と制度のズレ/ 3 義務教育の落し穴
Ⅶ 子どもと社会化エージェント
1 密室管理十二年/ 2 マス・メディア支配/ 3 子どもに自然と社会と友情を