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本書は十九世紀末期から今日に至るまでの、戦争と平和の概念を略説したものである。戦争と平和が現代人類の直面する最大の問題であるにもかかわらず、これを論ずるものの大多数は特定の国からみた戦略論か、機械的な国際政治論あるいは国際経済論の域を出ていない。現在最も必要なのは、戦争とは何なのか、そして平和をどのように定義するのか、等についての真剣な考究ではなかろうか。私はこのような見地から、十九世紀以来世に問われてきた戦争観、平和観の系譜をたどってみることにした。もとより限られた枚数で取り扱い得る概念や実例は選択的とならざるを得ず、本書の触れる諸現象の大部分がヨーロッパや米国、そして日本に関するものであることを、あらかじめ断っておきたい。私としては、戦争と平和のテーマはこれからも研究課題の中心としていくつもりでおり、本書はいわばその意図と方向とを示唆するための試みでもある。
十九世紀末期から今日に至るまでの数々の戦争観や平和論を追ってみたが、一八七〇年代から第一次世界大戦に至るまでの時期は、その後も影響力を持つ概念を数々と生み出したので、比重が大きくなっている。それに比べ最近二、三十年を描いた章は短くせざるを得なかった。時事評論的な記述になることを避け、できるだけ長期的にも意味ある問題に焦点を合わせたいと思ったからである。(「はしがき(増補版・初版)」より)
目次
はしがき(増補版・初版)
第一章 戦争と平和
一 戦争の概念/二 国際史と国内史/三 権力と文化
第二章 世界大戦への道
一 ビスマルクの国際秩序/二 軍拡と戦争準備/三 国内政治・社会の構造/四 局地戦争の可能性/五 帝国主義的戦争/六 経済発達と平和
第三章 米ソ日の登場
一 ヨーロッパの内戦から世界戦争へ/二 米国の役割/三 ボルシェヴィズムと平和/四 日本にとっての戦争と平和/五 パリ講和の意味
第四章 一九二〇年代の平和思想
一 平和の基盤としての軍縮と通商/二 革命的平和論の消長/三 知的交流/四 反平和主義
第五章 平和論の崩壊
一 一九三〇年代の特徴/二 戦争の必然性/三 戦争 と文化/四 平和思想の挫折
第六章 権力構造への回帰
一 力の対決/二 第二次大戦の思想的基盤/三 戦後平和のヴィジョン
第七章 冷たい戦争
一 一九一四五年の「平和」/二 現実主義の隆盛/三 平和への模索
第八章 民族解散という名の戦争
一 第二世界における戦争/二 新国際経済秩序から新冷戦ヘ
第九章 非政府組織と国際社会
一 冷戦の終結/二 国際テロの登場/三 NGOの働き/四 文化の多様性と国際秩序
終章 グローバル化時代の平和の探求