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本書は、このところずっと理論や学説研究のレヴェルでの著書や論文を書くことの多かった私が、意図的に経験的な日本社会の現状分析を志して書いた五篇の論文を、大幅な訂正。加筆をはどこした上で、『日本産業社会の転機』という共通論題のもとにあつめて一冊の本としたものである。
高度経済成長期を卒業して以後の日本がなんらかの意味で大きな転機にさしかかっているという考えは、こんにち少なからざる人びとによって共有されているものであって、アイディアとしてはすこしも珍しくはないであろう。ただ、この型の議論は従来、主として経済指標をよりどころにし、したがって経済学者によって行なわれてきた。これとはちがって、本書における議論は社会指標をよりどころにし、したがって社会学の理論枠組を用いて行なった現実分析である点が、特徴であるといえるであろう。また、思弁的な議論のみに終始することなく、論証の目的のために社会学的データの計量分析の手法を多く用い、方法的な厳密性を追求したことも、本書の特徴といえるのではないかと思う。(「はしがき」より)
目次
はしがき
第1章 日本産業社会の転機
1 日本社会論の位置/ 2 日本的特殊性テーゼの静態論的バイアス/ 3 後発産業社会の特性とそこからの離脱の転機/ 4 転機(その一) 人口構成における若さの消滅/ 5 転機(その二) 親族集団の機能的縮小と解体/ 6 転機(その三) 「日本的経営」の変質/ 7 転機(その四) 集団主義から個人主義へ
第2章 産業化と社会構造の変動
1 産業化/ 2 社会進化/ 3 経済的機能・政治的機能の発展と社会─文化的機能の退化/ 4 後発産業社会日本の転機と社会保障制度の機能的必要/ 5 福祉国家政策の機能的不可避性と構造的非代替性
第3章 福祉国家形成の普遍主義的解釈
1 福祉国家形成の普遍化的説明/ 2 国を単位とした計量分析の先行例/ 3 仮説の設定/ 4 モデルの構成と使用データ/ 5 経路モデルによる分析結果/ 6 若千の討論
第4章 産業社会の転機と労働者階級の分解
1 社会党支持率長期減退の意味するもの/ 2 「労働運動の時代」と「労働者政党の時代」/ 3 一九世紀西ヨーロッパ型の階級とその終焉/ 4 産業主義のテーゼと労働者階級の分解
第5章 日本と西ドイツの「戦後社会」とその転機――新中間層増大の意味――
1 「戦後社会」という意識/ 2 日本と西ドイツに共通する歴史的経験/ 3 ヴァイマール・ドイツと地位非一貫性の問題/ 4 戦後日本と戦後西ドイツの地位非一貫性/ 5 第三期産業社会への入口としての地位非一貫性増大の意味
注
事項索引
人名索引