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教育の世界ではこれまで、改革の理念や目標はほとんどの場合、上から、あるいは外から与えられ、設定されたものでした。(中略)ところがいま、「自由化」と「個性化」をスローガンに掲げる文部省の「規制緩和」政策は、改革の理念や日標を設定し、選択する自由を、それぞれの主体に大幅に認める方向をめざしているようにみえます。拡大された自由を賢明に行使するためには、改革ブームの表層的な動きに惑わされることなく、教育の世界で進行しつつある基底的な変化の構造をしっかりとらえて、改革のゆくえをじっくり見定めていく必要があります。本書は、そうした必要に応えるべく書かれたものです。
本書では中等教育、とりわけ高等学校教育に焦点をしぼりながら「教育改革のゆくえ」を論じました。教育改革が「考える」対象から「ゆくえ」をさぐる対象に変わつたことに、この十数年の大きな変化を痛感しつつ、教育改革を実りあるものにするために、本書がなにがしか、改革の進展とかかわりをもつ、あるいはもたざるをえない読者の方々のお役に立つことを願っています。(「はしがき」より)
目次
はしがき
1 教育の自由化へ――日本教育の変革
イギリスと日本/もうひとつの日本教育論/日本教育の問題性/統制と競争の導入/効率と弊害/教育改革の限界/戦後教育の光と蔭/自由と選択と/新しい教育像
2 大きな子どもか――高校生たちの現在
中等教育の問題性/つくられた青年期/大きな子ども・小さな大人/日本とアメリカの比較/高校教育の成功と失敗/大きな子ども化/規制の緩和か/小さな大人へ
3 進路をえらぶ―― 教育・職業・人生
昭和という時代/日本の進路指導/実績関係/自由とリスク/個人の選択/人生と職業/新しい理念を
4 個性化をめざして――高等学校の行方
自由から統制へ/ユニバーサル化の過程/「個性化」モデルヘの転換/周辺と中心/大学入試と高校教育/私学との競合/「個性化」を求めて/平凡な結論
5 高校と大学の間――新しい進学指導
自由化・個性化・多様化/多様化と接続関係/進学準備と大学入試/自由化の代償/大学「教育」の変貌/「教育」重視の傾向/授業の改革/人口不況の衝撃/「学生消費者」の時代
6 顔の見える大学を――大学改革の方向
偏差値競争から教育競争へ/隠れたカリキュラム/「教育」改革の方向/学生生活と人間形成/エリートからマスヘ/モデルの多元化/パブリシティの重要性/共同体としての大学
7 情報化のなかで―― 教育の新しい像
生涯学習時代の到来/言葉・文字・図像の文化/リテラシーの出現/一五世紀の印刷革命/学校教育への疑間/映像とイメージの文化/生涯学習の革新性
初出一覧