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『日本イメージの交錯――アジア太平洋のトポス』と題する本書は、第四回東京大学地域文化研究シンポジウム(一九九一六年六月八日)の報告と討論をもとにしている。シンポジウムの構成と進行については、三谷博氏の努力に負うところが大きい。
本書の内容は大きく二部に分けられる。第I部は「日本イメージの現在」と題し、第Π部は「アジア太平洋の歴史イメージ」を扱う。そこでは、中国、韓国、台湾、ベトナムなど、東・東南アジアにおける日本イメージが語られる。それと同時に、太平洋をはるかに越えたアメリカ合衆国ひいてはハワイを舞台とした自他のイメージと世界観、アジア太平洋の交易ネットワークについても豊富な素材によって議論されている。
ただし、日本とアジア太平洋の相互イメージを多角的に考える際に、日本海とオホーツク海など太平洋の境域によって結ばれる沿海州、サハリン(樺太)、カムチャトカ、アラスカといった北方世界の存在も逸するわけにはいかない。とりわけ、アジア太平洋の人びとの日本イメージを議論するとき、 ロシアの存在も無視できないことはいうまでもない。現代の北方領土問題をめぐる日本とロシアとの関係は、アジア太平洋のトポスに触れる特異な入射角になるだろう。(「はじめに 北方領土と日本イメージ」より)
目次
はじめに 北方領土と日本イメージ
Ⅰ 日本イメージの現在
第1章 韓国教科書の日本像
第2章 韓国ジャーナリズムの日本像
第3章 中国教科書の世界・日本像
第4章 現代台湾の日本像
第5章 ベトナムの日本像
第6章 戦争の記憶とアメリヵの日本像
Ⅱ アジア太平洋の歴史イメージ
第7章 近世日本人のエトノス認識
第8章 維新日本の「世界」規定
第9章 十九世紀前半アメリカの大平洋像
第10章 十九世紀前半アメリカの中国・ハワイ像
第11章 中国とアジア太平洋交易ネットワーク
あとがき 「歴史認識」をめぐって