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風というとらえどころのない現象を自然科学的に五〇年近く私は研究してきた。年を重ねるにつれて人間の環境条件としての風、文化的。社会的な風土の構成要素としての風についても考えるようになった。『風の世界』というタイトルでまとめた私の前著は、こういう風にまつわるもろもろの現象を記述し、一方では、風の一研究者をめぐる風の世界を紹介した。その意味では、私のいわば″風の思い″の書でもあった。
本書の第一の目的は、前著で取り上げなかったテーマにふれることである。第二の目的は、前著で扱ったテーマでも、その後、新しく収集したデータ、あるいは異なった側面や、異なった解釈などを紹介することである。これらをまとめ、新しく『風と人びと』を構築したものが本書である。前著の続編ではあるが、この続編だけを読んでも、私の「風の世界」は十分理解していただけると思う。もちろん前著とあわせて読んでいただければ、なお嬉しい。(「まえがき」より)
目次(詳細目次を略した)
まえがき
第一章 風と人びと
一 鯉のぼりが泳ぐ空
二 田んぼの景観
三 防風林と防風垣
四 コーカサスの緑
五 屋根と風
六 ジェット機の秋
七 風祭り・風の神・風の神話
八 風流な学問
第二章 風とともに
一 春と旬(しゅん)
二 食べ物と風土
三 風の芸術
四 天気図
第三章 インドネシアとモンスーン
一 ジャワの季節風と稲作
二 ボロブドゥールと自然
三 マジャパヒト
第四章 熱帯の風
一 熱帯の東風ジェット
二 モンスーンアジア
三 南大東島の台風
四 スリランカのマハとヤラ
五 熱帯アジアの限界
六 カリブの風土
第五章 タクラマカン砂漠と風
一 砂漠の雨と洪水
二 世紀末のカラブラン
三 砂漠化とじゅうたん織り
四 新彊のブドウ
第六章 風の気候
一 昔の風
二 風の国・風の里―― スイスの例から
三 日本の風
四 山の風・海の風
五 エル・ニーニョと風
六 世界の風系