「働き方改革」が進み始めたその最中に世界を襲った新型コロナウィルス感染症は、日本の経営や雇用・人事を巡る景色を一変させた。コミュニケーションがうまくいかない、これまでの労務管理が通用しない――強制的リモート環境下で露わになったのは、脆弱な日本型経営の下、右往左往する雇用、人事・人材マネジメントの姿だ。さながら「人事事変」とでも呼ぶような一大事件となっている。
しかし、今話題となっているパーパス・ドリブン経営も、ジョブ型雇用も、リモートワークを起点とするニューノーマル対応型働き方改革も、従来から課題とされ改革が叫ばれてきたテーマに過ぎない。雇用・人事改革の地殻変動は「ビフォア・コロナ」の時代から既に始まっていたものであり、そして、着地点も見えている。問われているのは、現局面における変革推進力(やりぬく力)なのだ。
では、どうすればいいのか? ヒントは、経営視点での「戦略人事」の推進と、従業員視点での「アジャイル人事」「人事のパーソナライゼーション」への迅速な対応である。そしてこれらは、DX(デジタル・トランスフォーメーション)経営のこれからを見据え、HRテックを有効活用しながら、ネクストノーマル(次なる日常)の時代が求める真のマネジメント・スキルとリーダーシップに磨きをかけることにほかならない。
本書は、人事マネジメント改革に多くの実績を持つ筆者が、雇用・人事の「いま・ここ」を俯瞰し、働き方と人材マネジメントの「これから」を可能な限り予測し、先進企業の事例も紹介しながら、そのあるべき姿を提示する、経営者、担当者、マネジャー必携の一冊である。