日本の学校では、スクールカウンセラー(SC)が「心理の専門家」として狭く配置され、既存の学校教育に合わせることが期待されてきました。本書は、その前提を日米比較で問い直し、米国でSCが生徒指導・進路・教務まで学校運営に横断的に関与する実態と、ジョブディスクリプションに基づく“一人一役”で専門性を発揮する設計を対照させます。さらに、日本の“チーム学校”が上意下達に傾くとSCの意義が希薄化するリスクを示し、役割と権限の明確化、協働(コラボレーション)の運用、リーダーシップ設計、評価と配置の見直しという「再設計の条件」を具体的に提案します。教師・管理職・教育委員会・保護者まで、学校に関わる全ての人に向けた実践的指針です。
また本書は、学校文化の前提や言葉の使い方そのものを丁寧に解きほぐします。たとえば欧米では「批判的(クリティカル)態度」は改善のための提案であり望ましい姿勢であること、「クレーマー」は本来“訴える人”という中立的な語であること、そして「ユニバーサルデザイン」を“障害者向け”に矮小化する誤解などを指摘。さらに、診断名やマニュアルに過度依拠して個別性を見落とす対応の限界、キャリアを「生きる道程」と捉える本義(ライフ・キャリア/ワーク・キャリア)も紹介し、教育観の更新を促します。これらを踏まえ、学校を「教師だけでは届かない声」に開くための制度設計と現場運用の両輪を提示します。