何度も読み返したが飽きない。あっさりとした絵なのに、その向こうに音楽の持つ深み、音楽の道を進むということのリアル、説明口調ではないのに何だかとても深く分かった気になる。もがいて苦しんでつかんでいくなにか。千秋を好きで好きで、というところから
、のだめは千秋と一緒にやりたいが為に道を進み、そして同じステージで、という夢が破れると、そのステージから抜けて、新たなステージへと独りで導かれていく。否、羽ばたいて行ってしまう。
極たまに、ガラかめ入るのも可笑しいが、全体がとぼけていて読者より、作品の中の音楽仲間を一杯食わしてひとり別ルートを辿る。孤高の天才?磨かれざる原石が、いち早くその才能を発見しその価値を放置できない千秋によって、刺激を有形無形に受けて、そして、偶然の出会いと三者三様の師たちの導きのお陰?で人生のターニングポイントを次の成長へと繋げて、一種気持ちのよいサクセスストーリー。
うまいのは、こうした音楽の道を最初は千秋についていきたい一心で、そのうちいつまでも先に進めていないという自分に焦り出すようになり、終には、演奏家としての成功へ、という各ステージで、相変わらずのだめぶりが貫かれ、キャラも絵も崩していないこと。長丁場のストーリーにも関わらず(2001〜2010年発表)、きちんと歩んだところが描かれていること。彼千秋の横にいたいと思った曲の世界に、自分のイメージを体現したのは、自分ではなかったことを認識してからの、凄みを増してくる展開のスピード感も良い。ミルヒーとのやり取り含めなにもかも、もはや、千秋の手には負えないのだ。
「花男」にも言えることと思うが、面白い作品とは、読み手の予想を必ず裏切る。
いつの間にか、当初全く相手にしなかったのだめを千秋は自分の女性として扱うようになるのだ。いつの間にかそういう存在になっていた、そんな静かな、進行の早くない二人の関係。連弾をするシーンがとてもよい。
アニメ化されており、そちらも見たが、アニメ化によっても、大きなギャップは感じなかった。TVドラマは見てないが、海外留学編を扱った映画は、実写の難しさの中でコメディを頑張る演出は記憶に残っている。
兎に角ストーリーにダレがなくてこれははまる。
時々千秋視点となって、ストーリー進行と共に千秋の心の中の、のだめの占める位置が大きくなっている描写で、千秋にとってののだめを感じるのも楽しい。
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