三本立て。
一本目は、ヒロインのことをずっと好きだった男性が、ヒロインの記憶の中では別人として存在、一からの関係構築を始める「葡萄色の記憶」。
二本目は、ヒロインのせいで人生を狂わされたと思った男性が、ヒロインへの愛を自覚する「再会は復
讐の始まり」。
三本目は、彼が自分をずっと愛することに不安なヒロインが、少なくとも自分は彼のことを愛していることでこの先を乗り越えようと心を固める「あの夜を消せない」。
ヒロインが深く愛されるということが描写されて、人間の強い恋愛感情はどんな波乱も困難も飛び越えてくる、というような強い太い軸のある「葡萄色の記憶」が私にはもっとも読みごたえが有った。HQの別作品「誰でもない人」(エマ・ダーシー原作。星合先生の手によってコミカライズ)を思い出した。
復讐ーのストーリーは設定からしてHQの得意パターン。ギリシャ、海運王、誤解、少女時代の憧れ、残酷な形での失恋、再会、偽装結婚。よくもまあ、HQお馴染みが揃ったものだと思う。人物の実在感が薄い。
あの夜ーでの二人は互いに既に愛し合ってると読者として思えるのに、当人たちが、愛してないとか、愛されてないとか、二人を徒に不安定な位置に置きたがる話。
再会ーのヒロインは余りに眼が転げ落ちそうで、彼も表情変化に乏しく、どうもメインキャラに気持ちを寄せられなかった。
あの夜ーの二人は絵がスッキリしてるために、二人のグダグダが逆にただのヒロインの文句、現状への不満だけが常にそこにある、という感じで、結局不満が収まっただけのストーリーに感じた。愛より肉欲が勝るのか?といいたげに、何度もベッドシーン描写があるが、ヒロインがこだわっている肝心の愛の存在確認が読んでいて面倒になった。結局何が欲しかったの?先の事は誰にもわからないのに。
言葉にすがりつきすぎていて、態度や時間の使い方で互いに通じ合うものはないのか、これまでの二人の間に流れているもので伝わらないのかと思った。
このセットのテーマ取りに関心を持った為、購入してみたが、バラでまず試し読みしてからにすれば良かった。忘れられない相手がテーマのHQは一般的にいってかなり数多くあるから三作品とも悪くはないが、纏まって読んでみると、この順番で提示される場合、最後の作品の二人の関係に付き合わされることに次第に飽きてしまう。
もっとみる▼