時代物だと細部描写まで丹念な絵を、初恋物では10年忘れられない思い出と共にある心理描写の繊細さを、電撃的な恋物語では出会ってから僅か二日間が珠玉のひとときとなったその煌めきを、ジワリ味わえます。
追憶の赤いバラーどんなに好きだったか。
その為、どれだけ頑張ったか。そして、接近する為に手の込んだ細工をしたが為の破滅。取り返しのつかない過去。ヒロインの十年愛、共感します。その年頃の時に好きになった人は、簡単には乗り越えられません。
あのときああしてればこうしてればと、思い悩み過去に囚われているのは、身に覚えがあります。人の心は理屈でないので。再会なんてしまったら、もう胸一杯。この作品が最も胸に来ます。
伯爵の花嫁候補ー名プロデューサーは名プレイヤーにあらず。いざ意識し出すと簡単にいかない。
彼の美女観が素晴らしい。頭の軽いプレイボーイではないのです。女性人気の高い貴公子の、ヒロインへの可笑しい頑張りが可愛らしい、楽しいストーリーとなっています。高品質の変身物。
愛を運ぶドレスータイトルもサブタイトルも邦題の方は具体的で解りやすいです。HQでは他にもウェディングドレスが幸せをもたらす、という仕掛けのストーリーを読んだ事がありますので思い出したら追記します。とにかくハプニングがとんでもないのに、彼が怒り出さない出来た人間で、ヒロインの肝の据わったキャラとどこか噛み合います。ピンチにパニックにならずに寧ろ月を愛でる心のゆとりで、彼マックの進行方向を変えてしまいます。乱入、のようなもの。「勘当されようが/一族を追い出され無一文になろうが/裸で〜を思えば余裕じゃないか。」彼がこの境地に達してクライマックスはちゃんと愛情溢れます。
この作品は裸体が紙面に溢れて、電車内は厳しいかも。二人の裸体は綺麗にさらりと描かれ、エッチシーンなしです。その場面は、舞台装置揃っているのに、おおらか。ロマンス成分もっと何処かで出して下さい、とは正直思いました。
ですが、思わぬ展開で、目を離せません。悪い人も悪い成分を骨抜きにされて、騒ぎは収まるところを新たに見つけて漸く落ち着きます。この作品はそれでよいのですが、月夜の下での無邪気さがふと真顔で感情にスイッチ、を、見たかったとチラッと思いました。
私は個別に買いましたがそれを高かったとは思いません。それを一冊にするとはお値打ちセットです。
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