自分の母親は子供の頃は、食べるときに無駄口を叩くなと言われて育てられたという。楚々と済ましてさっさと席を立つのが基本だったらしい。その居心地の悪さを聞く度に、楽しく語れる自分の家族を嬉しく思ったものだ。しかし食卓が団欒と言われて久しいが、私
のもっと小さな子ども時代を振り返っても、肘を張らない、箸の持ち方・使い方、汁の吸い方、おかわりの仕方、おかずのよそいかた、何から何まで一挙手一投足に、作法をただす声が入り、楽しかったばかりともいえない。
孤食の風潮を取り沙汰されてからもずいぶんになる。一人で食べる時期は誰にもあって、だからこそ、複数で食事する光景は笑顔が有り、交わす言葉に何気ない柔らかさや暖かさが有ったりする。その素晴らしいひととき。
それだけのことを題材にした、と思う向きもあるかもしれないが、逆に、今まで、それだけを採り上げた題材の漫画を思い返すと、ホームドラマか、既に同居人であるケースが多かった。
家族創生と食事を共にすることのコンビネーションは記憶が無く、新鮮で展開を楽しみに読んだ。
絵も味わいがあり,ほのぼのを地で行く優しさが、この作品の趣を明確に方向付けていて、それでいてどこか漫画らしいフィクション性をしっかりと打ち出していて、線が巧みに彼らの世界に自分を引き込んでくれた。
この作品に、実在感は無くていいと思う。いや、いるかもしれないが、このぐらいがちょうどいい、というところを突いていると思う。
なんで、BL?、と感じる向きも大いに理解できるが、それは人間を描く以上は、性別を一応どちらかにするしかないのだから、これはこれでバランス良く成り立っている話、と私は思った。
むしろ、BL上級者自負の人が、種と穣による、豊の取り合いに発展する視線を遠ざける意味で、この位の淡い明るさのストーリーが、この作品としては最適解だったのではないか?
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