レビューに並ぶ「癒される」「大人の絵本」の単語と可愛らしい表紙に惹かれて手にした本作。
そこには、動物が人と同じような姿に見えて話すことができる栗原君の見る、動物園で暮らす動物たちが、まるで仮想空間に現れたかのように、種別を超えて体格差
やリアル空間での能力の差も乗り越えて、それぞれの個体が持つ魂のコアな部分で、対等に意思疎通し、対話する空間が広がっていました。
初めて見る素敵な空間に浸るのが楽しくてワクワクして読み始め、動物を擬人化した絵柄の可愛らしさや照れ臭そうな、でも素直な愛情表現から気持ちの通い合う姿にホッコリして、ふぁぁ癒される〜.。.:*☆とうっとりしていたのです。が、ある瞬間、気付いたらツツツーっと涙が溢れ、自分でも予想外の出来事になんで?としばらく理解が追いつかなくなっていました。
こちらの作品、人間の栗原君はじめ、自分が普段いる同じ種の動物たちと感性が合わず、表面上周囲に合わせているけれど、生きづらさを感じている動物が登場します。そんな、可愛らしい絵柄から予想されるファンタジー一辺倒ではない、協調性の無言圧力を受けているオトナたちが日頃感じている感情に似た気持ちを抱いている彼らの存在にいつのまにか読み手も共感し、彼らが動物園で、その感覚に共感し、受け入れてくれる相手に出会い、癒されて心が軽くなると、読み手もそれに同調して救われたような気持ちになる…そうして本人も気づいていない深いところで抱えていた感情に響くのだ…と気付きました。
同時に、同じ種別で、言語も共通してて、感性も通じる社会で生きているのに周囲に合わせて過ごしていくことに自分は存外疲れていたのだなぁ。無意識に感じていたことにこんな形で気付かされるとは、確かに大人の絵本!凄い!と、初めての感覚に新鮮な気持ちで読み終えました。
レーベルクーポンがきっかけ購入。読み始めたときに予想していた以上に心に響き満足。心が疲れていると感じたとき繰り返し読みたい作品になりました。
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