タイトルには騙されないで。確かに、黒髪碧眼の「黒騎士」が見初めたのは「悲しみの乙女」とには違いないけれど。
これは女性を見抜ききっている黒騎士と、彼に心を救われた“乙女”との、「自立」したラブストーリーである。
ありがちな、男の力による
「女の出世物語」ではない。
現実にも、夫の或いは親の力というだけなのに、まるで自分の力であるが如く振舞う女性は結構いる。男性社会ではどうしようようもない面もあるが、このヒロインはその翼の下を去る潔さが格好いいのだ。
恐らくハリウッドという所は、才能あっても成功者は一握り、これはHQらしく安易な展開。リアリティを多分意図的に度外視、2人の出会いと成就とに主軸を置いている。実力があれば認める人が居るもので、評価しない人のことなど放っておいて、というメインストリームは貫徹、成功がそれを強調する結果となりスッキリ。私的には仇為した人達の後日談要らない。
実際、業界の権力者などのゲート的存在の餌食となっているケースは多いのだろうし(日本も黒い噂が信じられている)、親が子の芽を摘んでしまっていることも珍しくはない。
必ず親などの身内が味方、いつも周囲が応援者、とは限らない。反対されたり否定されたり、信じていた人に貶められることすらあると。
だからHQの軽やかな出来過ぎストーリーが快感ももたらしてくれる。
しつこいくらいの妨害、悪意に満ちた中傷、分け隔てする親、障壁だらけ。好きだった人からの仕打ちも流石話を盛上げ、ヒロインに対する逆境作りは作者も念を入れてる。
話は自信を与えてくれた人との出会いと展開。
他の先行二作品から読む(人形の花嫁、罪深き純真)べきとレビューで知って、最適ルートで読むことができた。
二作目の純真では一作目の脇役をいい意味で裏切り。三作目の本作でもいい意味で二作目のチョイ役ブレークが夢中になる姿を見せていて、連続して読むことで見晴らしよくしてくれた。
それにしても原題にtycoon(富豪)が入っているがブレイクのことらしい。作品中殊更には強調されておらず、イヤらしくなくてよかった。
美人ポジションのはずのヒロイン妹が悪態をつくときの醜さが物凄くよく出ていて、こう描けるならここは大きいコマで描写が生きていると感じた。
しかし三作共に1頁1コマというのが強い必要性を感じない所でも多用され、価格面でとても損した感じはした。
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