HQは素敵な出会いばかりあるが、たった一日、否たった一晩で、その相手と情熱的に過ごし、その晩を境に全てが変わってしまった話。
こういう男と女の原点のような話に、こんな恋愛してみたかったな、と思う。時既に遅しだから、こうやって読んで追体験感
覚をむなしく味わうだけなんだけれども。
くぼた先生の画風が彼の心情を思わせ振りな余白でプラスαの代弁する。 DVはよくHQに採り上げられ先日も読んだばかりだが(ヘレン・ブルックス/小林博美 「あなたに会えた奇跡」)、本作は救いに行った方が訴訟で反対に加害者扱いに貶められるなどということ、法廷闘争で必ずしも「正義」が通らなくなりそうなこと、読んでるときはその可能性に心中憤然たる気分にさせられた。悪い方が被害者顔するのは現実にもありがち、他に更に、ヒロインには頼もしくて鋭いケィティが居て、彼には右腕とも呼べる人間が居て、ストーリー展開の方向に捻りが入る。
終わり方が素晴らしい。卓越のドラマツルギー。こういう作家がいるのでホッとして、HQのコミカライズは読みに来れるのだ。くどくどしつこい結末は要らない。饒舌は大衆化には貢献するだろうが、俗化がクオリティを欠いてしまう。
カラッとした話ではないが、この出会いが、二人とも相手を暗闇と孤独、愛されない哀しみ、人を愛せない不幸から救いだす。
たった一夜の、その情熱の一夜の、素晴らしさ。それがそこまで力があったこと、HQという舞台で描いてくれたので味わえた。レディコミなど他ジャンルだと私は手に取らなかったろうから。
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