良い意味で、読後感がすこぶる悪いです。
人の弱いところに魔が付け込んで翻弄されるようなお話でした。
刑事サスペンスの体をしていますが、犯人も動機も明かされてしまっています。
描かれているのは蜘蛛の糸で釣られた強い刑事・常田と、釣った究
極のマゾ・神島、2人の顛末でした。
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序盤から中盤は神島の底が見えない不気味さがじわじわと迫って来ます。
「経典」なだけに、Mとしてあるべき行動は、どんなに反社会的であっても神聖で守るべき規範なのでしょう。
その揺るぎのない様(信仰心)が、あってはならないのに物語の土台のように思えてしまいます。。。
常田は人の縁に見放され、自らも人との交わりを断つ、孤独な優しい男です。
それでも刑事として悪に対し強くあろうとし、実際強い男のはずでした。
しかし神島が垂らした細い糸の先に在ったモノは?・・・
強い男が陥落されていく様子が、ぞわぞわと気持ちを侵食していきます。
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それにしても野良先生のキャラ立て力は凄いです。
リアルな複雑さがとても魅力的です。
普通は立ち過ぎたキャラは、物語のいく先を読者に気取らせがちです。(このキャラならピンチの時にこう切り抜けるだろうと予測できたり。)
それは物語を紡ぐ上であってはならない事です。
なのでそれを回避する為に、キャラクターの多面性と、恋愛による変化がストーリーに組み込まれています。
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2人の結末にはまだたどり着いていません、と思いたい。
多分決着をつけないでこのままでいくんだろうなという空気が残念です。
最初の願いが変わってしまったのなら、それもしょうがないのかな…
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